32インチのお気持ち表明!!!!!

言いたいことを言いたいだけ叫びまくる。

セックスとは祈りである。

 ペットボトルといえば、何を連想するだろうか。サッカー元日本代表とじゃんけんをするあの炭酸飲料か、ライブ会場付近の自動販売機に大量に入荷される柑橘系のジュースか、はたまたゴミ拾いの対象として考える人もいるかもしれない。

 

 少なくとも、爆弾を連想する人はまあほぼいないだろう。

 

 スピッツには『ハチミツ』というアルバムがある。ロビンソンとか、涙がキラリ☆とかが収録されているやつだ。その中でそこまで有名じゃないけども、「ちょっとスピッツ知ってるぜ」くらいの人から圧倒的人気を誇っている曲がある。それが『愛のことば』である。

 

 まあ悪いことは言わないからPVを見て欲しい。

youtu.be

 

 いかがだっただろうか。愛のことばというタイトルとは裏腹に、少々不気味な雰囲気な映像。恐怖を感じる人もいたかもしれない。

 

 草野マサムネは、書いた歌詞の解説をすることは滅多にない。この曲の解釈に関しても多分に漏れず、スピッツに耳と脳みそを溶かされた猛者たちがマサムネ語を我々の言葉に翻訳したものにすぎない。それを承知の上で、歌詞の意味を調べて、ひっくり返った。

 

 テーマは「反戦」だという。歌詞の細かい解釈については、「愛のことば 解釈」でググればとても分かりやすい記事がヒットするので、ここでは省かせてもらう。

 

 ただ、「愛のことば」というタイトルで反戦を歌うというその発想は狂人としか言えない。LOVE AND PEACEをこうも残酷にロマンチックに退廃的に描いた人間が未だかつて何人いたのか。

 

 

 

 少し個人的な話をさせてもらおう。中学1年の時、国語の授業で『ベンチ』という作品を読んだ。詳しい話は忘れたが、第二次世界大戦中のユダヤ人差別をテーマにした話だったような気がする。この授業の一環で、とあるビデオを見させられた。

 

 当時差別されていたユダヤ人にインタビューを行ったビデオだった。そこで、一人の男性がこんなことを語った。

 

 「収容所に送られる車の車内では、神に祈っている人がいた。セックスをしている人もいた。この二つの行為は、一見全く別物のように思えるが、実は両方とも意味することは同じなのかもしれない」

 

 具体的な論理展開は忘れてしまったが、何はともあれ、この男性の当時の状況下においては祈り=セックスであり、セックス=祈りだったのである。

 

 『愛のことば』を聴くまでは、この話は授業中に「セックス」という単語が出てきて面白かったねといういかにも中学生的な思い出として記憶に刻まれていたものだったが、いったん『愛のことば』を聴いてからは、このエピソードと『愛のことば』が強烈に結びついた。

 

 「ペットボトル」が砕け散り、煙が舞う中で溶け合うようにセックスをしている。愛のことばをささやきながら。

 

 そこにある祈りはなんだろうか。くだらない話で安らげていた愚かなあの頃に戻りたいというものなのだろうか。極限状態に陥ったことのない俺には到底想像もつかない。

 

 

 

 音楽的な話もしよう。この曲の特徴的なところは、やけに音圧の強いベースにある。普段ベースなんか気にしていない人でも嫌でも耳についたに違いない。ここに示されているメッセージは何か。

 

 愛のことばのベースはBメロを除いてほぼ同じリズムパターンを演奏している。八分音符→八分音符→十六分休符→付点八分音符→四分音符→四分休符の音型である。

 

 同じことの繰り返し、つまり「限りある未来を搾り取る日々」である。そしてそんなくだらない毎日が何よりも宝物だと伝えてくる。くだらない毎日から逸脱していき、昔あった国の映画で観たような段階に移り変わるとBメロで音型が変わる。セックス=祈りをするサビでは元の音型に戻る。

 

 ここでの祈りとは、くだらない毎日に戻りたいというものなのだろうか。

 

 

 ドラムにも注目したい。ややキツめに革を張って、三角型チップの尖ったところで狙いすました、「バチン」といったような乾いていて破裂的なスネア。少なくとも他のスピッツの曲に比べ、高めに設定されている。銃声の暗喩なのだろうか。この音を1曲通して叩き続けられる崎山龍男の地味で高度なテクニックにはただただ脱帽である。

 

 クラッシュシンバルも気持ち音の持続が長い。爆発の豪音が響き渡っているのを表現しているのかもしれない。

 

 ただ曲をかっこよくするためのドラムではなく、曲の一部として打楽器にしかできない表現をしていて、ため息が出てしまう。

 

 ギターに関しては知識が浅いあまりに何もわからないので割愛する。実はベースも何もわからないまま書いていたが。間違っていることもあるかもしれないが多めに見て欲しい。

 

 

 

 以上で見てきたように、愛のことばは歌詞、曲両面において素晴らしいものであることが分かっていただけたと思う。ただ、最初に書いた通りこの解釈は草野マサムネから提示された正解ではなく、先人の解釈を自分なりに再解釈してまとめたものである。みなさんもぜひ、もう一度曲を聴き返して自分なりの解釈を見つけてみてはどうだろうか。そのときにはすでに、愛のことばに脳を支配されてしまっているかもしれませんが。俺のようにね。